カメラのレンズ

 最近は昼間、テレビを見る機会が増えました。割と見ているのがSBCの午後2時からの「ずく出せテレビ」です。理由があります。20年ほど前、「ほっとスタジオ」という似たような夕方の番組に、コメンテーターとして1年半ほど出ていたことがあります。残念ながら、顔がいいからとか、頭がいいからという理由ではありません。勤めていた新聞社の上司から、ある日突然、理由不明のままSBCへの出演を命じられたのです。

 やることは、新聞記事や番組で流したニュースの解説が中心です。大慌てで資料を集めてスタジオに入って机の前に座ると、目の前にテレビカメラが3台、そらってこちらに向いています。黒く光るレンズの奥を見ていると、私のこころをのぞかれている気持ちになるのです。「たいした知識もないのに知ったかぶりをして」なんてつぶやいているように見え、怖くてレンズを正視できませんでした。毎日スタジオに入るのがしんどくて、半年で胃炎ができ、おまけに痔にもなっちゃいました。いま、後輩が自由に楽しげに話しているのを見ると、たいしたものだと感心しています。

 あれ以来、どうもテレビカメラに限らずカメラのレンズが苦手になりました。レンズを向けられると、こころの底を見透かされているようで、表情が硬くなりほほ笑むことができません。政治家や芸能人がカメラを直視して堂々と笑顔を交えて話しているのを見ると、彼らは本心を話しているから怖くないのか、あるいは本音を見透かされないテクニックで怖さを封じたのか、考えちゃいます。もちろん、後者であることは間違いないでしょうが…。

【石渡区長:水越渉】