石渡写真クラブ月例会(5月)作品&講評

石渡写真クラブ月例会(5月)作品&講評
 石渡つうしんへの作品発表が遅れ6月に入ってしまいましたが、桜も新緑も終わりすっかり初夏の装い。異常気象とはいえ、梅雨入り前の暑からず寒からず、一年で一番過ごしやすい季節となってまいりました。
 今回の例会作品は、長い冬から春を迎え「待ってました」とばかりに花開いた桜を中心に、花桃、ニリンソウとリュウキンカ、ネモフィラ、チューリップなど花の作品が多く寄せられました。花を通して、作者側も「やっと春が・・・」とシャッターを押した気持ちが伝わってきます。
 さて、ぼつぼつ爽やかな季節から、うっとうしい梅雨、そして夏本番。そんな季節の移ろいにカメラを向け、ともに頑張っていきましょう。

 講評はクラブ員で講師の増田今雄さん(5常会)です。
 写真をクリックすると拡大して見えます。
※作品・講評の順番は、会員の氏名をあいうえお順に、月ごとに逆にして紹介しています。

【倉澤 利和】「ヤアーイ!こんにちは」(佐久市千曲川スポーツ交流広場)=5月5日
コメント:5月3~5日に行われました佐久バルーンフェスティバルに行ってきました。5日、最終日でしたので会場は人盛り。熱気球係留体験が行われていました。
講評:ありきたりですが、気球が大空高くたくさん写っている写真はどこかで見たことがあり、見栄えはするものの「またか」とあまり新鮮味がありません。盛りだくさんのイベントがあったかと推測しますが、この作品はそのようなものではなく、「体験」の模様とのこと。右下にのんびりと見学する家族連れを配置、グラウンドの中には気球二基と順番を待つ人たち・・・。のどかな春のひと時が感じられます。「ケンシロウ見参」(佐久市千曲川スポーツ交流広場)=5月5日
コメント地元佐久出身の漫画原作者武論尊さん、漫画で人気の北斗の拳主人公のケンシロウがデザインされた熱気球です。
講評:1昨年の県展の入選作品に、アニメの主人公が描かれた気球を題材にしたものがあったかと記憶しています。気球の間近まで迫りワイド系レンズで上がる寸前の大胆な作品でした。倉澤さんの作品はやや遠目ですが、目の付け所は同じ。ケンシロウが佐久平の空を独り占めしているような感じがいいです。

【小池 公雄】

「凛として」(松本城)=4月12日
コメント:画面いっぱいの桜に囲まれた松本城を撮ろうと思いましたが・・・。
講評:お城だけではどう見ても(撮っても)面白くも何ともないですね。花でも山でも、建築物でも、人物でも、そのものをズバリ撮る方法もありますが、その中に息吹というか作者の思いなどを込めなければならず、表現方法としてはやや難しい。そこで、一歩、プラス何かを絡めての手法になります。遠近はとにかく周りにあるありとあらゆるものを画面の中に整理整頓し、主題を中心に画角を決めていきます。その意味で、ずばりお城だけでなく、左に桜の花、右には常緑の樹木を入れ、散策する人たちをあしらい、それらに囲まれて「春」を迎えた松本城が控えめながら存在感があります。タイトルのように「凛として」見えます。
「春の稜線」(飯縄山頂付近)=5月2日
コメント:近隣の山の頂をまぢかに感じながら稜線を行く爽快感を何とか表現できたらと思いました。
講評:笹を覆う残雪、芽吹き前のシラカバと冬から目覚めたばかりの山頂の様子が軽快に描かれています。シラカバの向こうには、妙高連山も遠慮気味に顔を出し爽やかさが伝わってきます。

「高原の芽吹き」(飯綱高原柳沢の池)=5月2日
コメント:林を抜けた途端に、降りてきたばかりの山の頂と、湖面に映る空の青・芽吹きの若芽色の景色が目前に開けました。ハッとした美しさを切り取れればと思いました。
講評:樹林帯を走るバードラインをショートカットした道路沿い。池に写った新緑や空を二分割構図でまとめました。空色も投影した水面の方が鮮やかで、くっきりと浮かび出た雲とともにハッとした美しさが表現できました。

【高山 三良】

「サクラと遊ぶ」(長野運動公園)=4月13日
コメント:今年の桜はどう撮ろうかなー、サブトラックを散策していました、お花見と食事とスポーツを済ませた家族連れが帰るところでした。まだ遊び足りない様子。
講評:年年歳歳花相似たり。また今年も咲いた運動公園の桜。そうは言っても、今年はどうやって?と頭を悩ませたとのことですが、人それぞれの動きが違った感じで捉えられ味わいある作品となりました。左の子どもがペットボトルを手に打ち上げたバトミントンの羽を見上げ、その先に空中高く上がった羽。それを見届ける?お姉ちゃん。その右には軽やかに足を広げ腕を大きく振り上げた少年。さらにその右には、ザックを背負い、クーラーボックス様のものを手に左の人物方向に向かってくる女性。それぞれの関係性は不明ですが、咲いた桜の花に集う人物群像をいいタイミング、瞬間で捉えることに成功しました。
「霧のリゾート」(いいづなリゾート)=5月1日
コメント:水芭蕉は大きな葉っぱに、ニリンソウは霧雨でつぼんでいました。ニリンソウとリュウキンカの共演は見ごたえがありました。
講評:お日様が差さないと花を開かないのはフクジュソウと同じですね。花は白い点にしか見えませんが、向こうのリュウキンカの黄色、霧とのコラボレーションでしっとりとした高原の湿地帯の雰囲気を捉えています。右の大木がアクセントとなり、画面に安定感を与えています。

【中島 弘】

「花桃の小路」(上田市武石余里)=4月28日
コメント:上田市武石の花桃を見に行ってきました。川沿いや道沿いの花桃並木が見事でした。花桃と言えば阿智村の月川温泉が有名で華やかさがありますが、武石の花桃は周囲の山々と調和して素朴な田舎の原風景を遺していました。
講評:手前右と上部に大胆に花桃の枝をあしらい、くねくねとした花桃街道が向こうに延びていく。さらに民家が点在、里山が左右から入り込み、その向こうには小さい山(丘?)、青空・・・。どんどんと先へ先へといざなわれるような錯覚を覚える遠近感が強烈に出た作品です。手前左下の道路の影も、無粋なアスファルト空間を埋めいい感じで落ち着かせました。
「城址の枝垂桜」(小諸懐古園)=4月19日
コメント:桜を撮り損ねたので開花が遅い小諸城址に行ってきました。桜は散り初めでしたが、枝垂桜が見頃で淡い色がなんとも清楚で春らしさを醸し出していました。
講評:桜の花は、とかくぼてっとした塊の花の写真に陥りがちです。が、清楚ないい感じの小枝を見つけまとめました。およそ100㎜の中望遠を使い、絞りもF4と開けて前景、背景をぼかし、主題を強調できました。できれば、ぼけてもいいですが、背景にお城の片鱗などが入ると・・・。

【早川 球喜】

「なんじゃもんじゃ」(善光寺参道=アーケード通り近い)=5月7日
コメント:5月7日付の斜面(信濃毎日新聞)に「長野市の善光寺表参道沿いにで『ナンジャモンノキ』と説明が添えられた街路樹に、今年もいっぱいの白い花がついた」との記事が掲載されていました。いにしえの記憶が蘇り、名前につられて写真撮影に出かけました。長野では初めて見ました。
講評:私もかつて、松本平の南西、島々から入った奈川渡かいわいにこの木があると記憶がありますが、実際に見たことはなく、この作品で初めて見ました。また、同じ記事も読みましたが、「では」っと腰を上げることもなく、早川さんの行動力に脱帽です。参拝者を歓迎する吊り花もあしらい、周辺のビルや道路、車などから市街地の環境がよくわかります。ただ、ワイド系レンズのため、画面がやや右下がりでビルなどが傾き不安定です。右端は垂直で一見いい感じに見えますが、この手の場合は画面の中央線を垂直にするのが常套的な加工方法です。矯正加工してみました(写真下)。

【廣澤 一由】

「ネモフィラの丘」(茨城県ひたち海浜公園)=4月22日
コメント:ネモフィラの丘は、満開の花を見に訪れた人・人・人で大混雑であったが、こんもりした丘一面の花に感動した!
講評:圧巻ですね。淡白なブルーがきれいですね。(植栽が)人工的なものと言ってしまえばそれまでですが・・・。上下に二分割され、空のスペースが多めです。画角を少し下げ空を削り、花をもっと入れるとよかったかと思います。ならば、加工段階で上部を半分トリミングし横ワイドに仕上げる方法もありです。後、狙い方としては、人、人、人をあしらいながら、花の群れ、人の群れをうまくマッチングさせる撮り方もあったかと思います。
「多彩な花園」(茨城県ひたち海浜公園)=4月22日
コメント:多色、満開のチューリップ園は、色々な種類のチューリップで彩られ、メルヘンの国を思わせる景色であった。
講評:この作品もやはり二分割され、主題のチューリップが弱められています。上の部分の半分くらいはカットしてみましょう。

【宮澤 一成】

「蜘蛛の化身」(高山村)=4月12日
コメント:高山村の五大桜の一つ、水中のしだれ桜です。まるで巨大化した蜘蛛が、足を広げているような感じがします。
講評:擬人化というか木の枝ぶりを昆虫、クモに見立てた作品。目の前にある物や光景を別の視点で想像を巡らせて作品とする。典型例として今の残雪時期の雪形がありますが、写真の一つの楽しみ方と思います。大いに創造たくましくしてほしいと思います。花の間から垣間見える枝が八方に伸びたクモの脚のよう・・・。そう言われて見ていればだんだんとそう見えてきます。で、鑑賞した人も「なるほど」と。撮った思いをそのままタイトルに反映していますが、このように素材と対峙したとき、何を感じるか、それをどう表現するかということが大切。逆に言うと、タイトルを付けやすい感動を持つこと、見方をすることが、主題が明確な作品を産む一歩です
「倒れるぞ~」(高山村)=4月12日
コメント:こちらも五大桜の一つで、赤和観音のしだれ桜です。斜めに伸びた太い幹、支えが無ければ間違いなく倒れるでしょう。
講評:支えがないと倒れそうな老木。超ハイアングルから切り取り新鮮な感じとともに、今年も花を咲かせた生命力が感じられます。右下に男性を点景に入れて大きさを表し、C構図の背景の道路も流れを演出しています。ただ、濃いブルーの車はいるか、いらないか?迷うところです。スローシャッターでぶらす、別の色ならいい、いっそうのこといらない・・・。

【吉田 幹男】

「春の空」(須坂市臥竜公園)=4月13日
コメント: 臥竜公園から北信五岳の山並みを桜の背景にと思い出かけたのですが、黄砂もあるのか霞が強く春の空は残念。                                                               
講評:確かに上の写真の遠望する北信五岳の峰々は黄砂でしょうか、春霞でしょうかくっきり見えず残念です。思い切ってアングルを変え、別カット(下写真)はすぐそこの山やお寺など周辺の環境が入り、水面に桜も映り込みうまくまとまったと思います。水鳥でもいるとなおよかったかなと思います。