石渡写真クラブ月例会作品(8月)

石渡写真クラブ月例会(8月)作品と講評
講評はクラブ員増田今雄講師(5常会)です。
※写真をクリックすると拡大画像で見れます。

【池田 治雄】「お勤め帰り」(善光寺)
 早朝の「お朝事」でしょうか、善光寺住職がお勤めを終えて帰るところです。日がまだ斜光で、灯ろうの長い影、撮影する自分の影が写りこみ、朝の雰囲気を写し込んでいます。抜けるような空の青と住職に随伴する朱色の傘がバランスよく印象的です。

【笠原 美敬】「2000年前の古代蓮」(木島平村稲泉寺)
 太古の眠りから目覚め、今に花を咲かせる大賀蓮。今年も見事に開いたピンクの花一点を、広がる葉の中央に配した「日の丸構図」が力強く作者の感動を伝えています。半逆光で微妙な光のトーンが、花を立体的に浮かび上がらせました。

【萱津 信子】「エメラルドグリーンの昇竜湖」(須坂市の豊岡ダム)
 ダム湖周辺の木々の緑が水面に反射、エメラルドグリーンに輝く様を表現しています。山肌のまだらな部分から落ち着かない空模様が感じ取れますが、光の当たった木々は立体的でいいです。それと、湖面が湾曲した逆Cに近いアルファベット構図が奥行き感、流れを出しています。手前にある空の映り込みもアクセントになりました。

【倉澤 利和】「静かな運動公園」(南長野オリンピックスタジアム)
  わが足元の運動公園でなく、たまには南の運動公園も新鮮ですね。長野冬季五輪の開閉会式で沸いたスタジアムの花びら模様の外壁、照明塔を少し入れ、秋色に染まる樹木と大空に流れる秋雲が印象的です。人工と自然がうまく調和した作品となりました。

【高山 三良】「私でも襖絵くらいに」(運動公園)
 足元の運動公園に咲く「ハルシャギク」というオオキンケイギクの仲間の雑草です。もともと観賞用として明治時代に日本に移入した外来種ですが、繁殖力が強く、庭先から逃げだしてあちこちで増えて繁殖するように。見た目にはきれいですが、花は悪いわけでもなく、基本的にはほかの在来の植物を駆逐してしまうところが問題視されています。 そんなことはさておき、きれいに咲く花の群落を上手に切り取って作品にし、野に咲く雑草でも襖絵にしたら・・・という思いが伝わってきます。背景の単純化した緑色、適度に散らばる花々が浮世絵風に表現されています。

<写真は引き算>
   
写真をうまくまとめるコツは「切り取り」、「引き算」です。目の前に360度広がる景色や物体の前で、自分はどこに、何に感動をしたか。それをカメラという道具を使い、写真という作品に仕上げ伝える。そのまま漠と写すと、その中に伝えたいものは含まれますが、見る人に自分の感動を伝えるまでは行きません。雑然とした中から、自分の感動(主題)を見つけ、それをいかに切り取ってまとめるかです。
     切り取りには、以前お話ししたかと思いますが、アングルやフレーミング、効果的なシャッタータイミング、絞り、光の使い方、背景処理、レンズ選択などなどが複合的に同時に行われなければなりません。
    ぼーっとしているわけに行きません。ですから写真をやると脳の活性化を促し、若さを保つ(写真県展審査員細江英公氏)と言われる所以です。
    よく目の前の物を観察、主題を見つけ、切り取る。それが写真です。

【竹内 一郎】「ソフィアとマーヤ」(自宅)
 たかがヒマワリですが、大胆な切り取りとミツバチが見る人の目に飛び込む迫力があります。望遠系でひっぱり、深度も深く花びら、雄しべ雌しべ、主題のミツバチにピントが来ています。童話の世界にちなんだタイトルも作品とうまく合い、作者の表現したいこと、見る人に訴えたいことがダイレクトに出た作品です。

【中島 弘】「寺町の朝」(飯山市) 
     飯山市の仏壇通りでしょうか、雁木造りの歩道が続く店頭の植え込みに紫や白色のキキョウが行く人に安らぎと癒しを演出。対面の家並みが遠近感を演出し、小さいがポツンといる人らしきものがアクセントになり画面を引き締めました。

【早川 球喜】「白糸のような雷滝」(高山村) 
     滝を内側から見ることができ別名「裏見の滝」と呼ばれる滝。その裏側の部分に露出を合わせ、岩盤や歩道の様子がよく分かります。その分、明るい滝の水は調子が飛び、白糸のようになりかえって面白い感じの作品になりました。右の樹木、滝、裏側と縦三分割構図でまとまっています。水の部分に露出を合わせると、暗い部分は真っ暗につぶれ、また、違った感じのものになります。

【広澤 一由】「岩に張り付く観音堂」(小諸市布引観音)
         朱色の柱の観音堂がぴたっと岸壁に張り付きその景観に圧倒されます。「右の空間の向こうに浅間山が・・・」という浅間山は残念ながら天気具合で見えません。浅間山が写りこんだ写真をどこかで見たことがありますが、有名なスポットと言っていいでしょう。「どこかで見た作品だなー」になってしまいますが、まずは、そういう写真に挑戦してみることが大切、第一歩と思います。手前の木々が赤や黄色に染まる紅葉と絡めたらぐんと引き立つと思います。

【吉池 安雄】「涼しい家」(木島平村稲泉寺)
 大胆に蓮の大きな葉を手前に、花は一輪。うまく入道雲を背景に奥行き感も出ました。ローアングルで寺の建物を葉で隠すように撮っていますが、少し下の部分をカット、上の青空を活かしたら空気感がもっと出たと思います。少し中腰になりアングルを上げ、建物をさりげなく入れて、雰囲気を盛り込んだ方がしっくり落ち着くのではと思います。タイトルにある「家」が、もっと見えてきます。