「区長の独り言」カテゴリーアーカイブ

2つの防災

 朝陽地区の区長会で、名古屋市港防災センターを見学しました。地震体験室で関東大震災と同じ震度7を体験。最初の揺れは大したことなく「こんなものかな?」と思っていた瞬間、すさまじい揺れが襲ってきました。テーブルの下にもぐって脚をしっかり抱きしめましたが、食器棚は倒れる、やかんは飛んでくる…。「怖い!」。1分間が10分にも感じられました。これは横揺れだけで、実際の地震は縦揺れも加わるから怖さは2倍、3倍になりますとのことでした。

火災避難訓練―。突然電気が消えて真っ暗に。「火事だ」の声が。すると大量の煙が噴き出てきました。ハンカチを口に身を低くして壁を伝って逃げようとしますが、ドアにはカギがかかっています。隣にカギのかかっていないドアがあったのに、慌てているうちに煙が充満して逃げられなくなりました。

 朝陽支所で行われたもう一つの「防災」はこれと対照的です。災害発生で開設した避難所運営を、5人1組でゲーム形式で行う模擬演習です。小学校の教室や体育館を避難所として想定、地区の役員が次々に訪れる被災者をどう受け入れるか―。日赤の講師が訪れた被災者の様子を読み上げます。「4人家族。1人は重い障害者」「2人の乳児を抱えた夫婦。奥さんは妊娠中」「6人家族。おばあちゃんは痴ほう症。子どもはインフルエンザ」などなど。

 メンバーの5人は被災者の名前を書かれた札を、体育館や教室に置いていきます。「インフルだから個室にしないと」「障害があるので通路やトイレに近い方が」「ペットはどうする」。あれこれ話し合っていくのですが被災者が続々と読み上げられ追いつきません。焦りと楽しさが交錯した演習でした。

 「怖さ」による体験と「楽しさ」による演習。手段は異なりますが、防災をわが身と思って準備してほしいというのが主催者の狙いです。わが家もタンスや食器棚の転倒防止や窓に飛散防止のシールを張らなければとその時は思いました。しかしまだやっていません。分かっちゃいるけど…なんですね。これではいけません。せっかくの体験を生かさないと。

【石渡区長:水越渉】

分かっちゃいるけど…

分かっちゃいるけど…

 毎週月曜日に石渡公民館で開いている「はつらつ運動講座」に通っています。といってもまだ始まったばかり。いまは、市の介護保険課から講師が派遣されて指導していますが、やがて受講者同士で講座を運営していくことになっています。目的は健康寿命を延ばすこと。2025年問題というのがあります。後期高齢者が急増して医療制度や介護保険制度が立ちいかなくなるというのです。だからいまのうちに老化防止、認知症防止のための運動を…ということらしい。

 受講者は60代や70代がほとんど。毎回2~30人が約2時間、筋トレやストレッチ体操のほか、膝痛や腰痛予防体操などを行っています。あっ、それから認知症予防の脳トレも。自宅でやる筋トレやストレッチ体操のイラストをもらい、毎日やるように言われました。

 さっそく冷蔵庫の扉にイラストを張って、食事をつくる合間にやってみました。全部やってみるとけっこう疲れます。全部はとても無理。で、初心者用の5種類の運動をやり始めました。何日かは続けましたがいつのまにか得意のサボリ病が…。続けなければと、分かっちゃいるけどそれができません。そういうのってたくさんありありますよね。たとえば健康に悪いと知っていて40年も喫煙を続けたこと、血糖値によくないと知っていても毎晩風呂上りにアイスを食べること、等々。

 人間、長く生きていると言い訳ばかりうまくなるようです。でも残りの人生を病気がちで過ごしたくありません。家庭菜園やバイク、旅行などを楽しみたい。病気になって家族や世の中に迷惑をかけたくもありません。いま、真剣にやろうという気持ちが湧いています。今日からやるぞ。あっ、今日は体調がよくないから明日からにしよう。ぜったい続けるぞと胸の中で叫んでいます。

【石渡区長:水越渉】

8人の区長

 朝陽地区には石渡区をはじめ8つの区があり、それぞれの区から区長選出され、区長会をつくっています。月1回程度会議を開き、主に市の行政などについて話し合っています。例年、個性的な区長が見受けられるとのことですが、周囲の評判によると、今年は特に個性的な区長が多く、またとても仲がいいとのことです。私を除く7人の区長の“個性ぶり”を紹介します。

 区長会の会長が北堀区長の千野登さん。とにかくバイタリティーにあふれ、指導力は抜群。「なにを食べるとあんなに元気なのか」と思うほどです。意外に気配りもあるから人間って面白い。対照的なのが副会長の志村正秀さん。桜新町区の区長です。穏やかで物静か。声を荒げたシーンを見たことがありません。

 南屋島の区長は本藤富士人さん。痩身でひょうひょうとしながら時に鋭い一言を放ちます。私は内心「眠狂四朗」と呼んでいます。家庭菜園で知り合った私の師匠でもあります。北屋島区の区長さんは山口茂實さんです。うまく言えませんが面倒見がよく、スルメのようにとても味のある男です。私と同い年で気が合います。北長池区長は渡辺登さん。スピーチの時、髪を振り乱し手を振り回す動作が芸術的です。そのユーモアのある話術は私たちをなごませてくれます。北尾張部の区長は赤沼静男さん。名前の通り物静かですが、メカに強く特にパソコンに全く弱い私の質問に嫌がらず教えてくれるナイスガイです。最後は南堀区長の白井千尋さん。品格ある県庁の元幹部職員でチョー博学。社会福祉法人の理事長も務めており、区長会のジェントルマンといえます。

 この7人に共通しているのが、酒に強いということ。私は全然だめなので酒席ではいつも孤独。ではありません。みなさん、私に何かと気を使っていただき、最近では飲み会でのおしゃべりが楽しみになっています。何人かとは生涯付き合う予感がしています。そんな人たちに巡り合え、区長になってよかったと思うこのごろです(ほんの少しですが)。

【石渡区長:水越渉】

気になる光景

 先日、「地域と学校との連携懇談会」が開かれ出席しました。 参加したのは、朝陽地区とその周辺の8つの小学校や中学校、高校の校長や教頭、生徒指導の教師などで、地域からは住民自治協議会や各学校のPTAの役員などです。校長や生徒指導担当が、生徒の様子や学校が取り組んでいる課題などを報告しました。

 たとえば地域の関心の高い「いじめ」について、いじめ調査を年3回行っているが問題はないなどが報告され、生徒の様子については、服装の乱れもなく、各学年、学級はよくまとまり、前向きに仲間とのかかわり合いに取り組んでいるなど、ほとんどの学校から問題ないとの報告が出されました。

 「ほんとかな?」なんて聞いていると、ある光景が浮かんできました。7月初旬に行われた中学校の授業参観です。1時間の間に自由に各教室を回って見学していいとのことで、3つのクラスを回りました。驚いたことに、どの教室でも1人、もしくは2人の生徒が机に伏せて寝ています。ところがどの先生も注意もせず淡々と授業を進めています。中学生だった昔、居眠りしていると忍び寄ってきた先生に頭を殴られた経験がある私にとって違和感のある光景でした。

 なぜ叱らないのか。先生の気持ちを“忖度(そんたく)”してみました。「注意したり叱ったりすると教室が騒ぎになって授業が滞る。それならそっとしておいた方が他の大多数の生徒のためになる」。こんな心理なのかも知れません。それって事なかれ主義というのでは。連携懇談会での各学校の「特に問題はない」との報告も同じように事なかれ主義が背景にあるのではと感じました。でも、それはたぶん私の邪推なのでしょう。どの学校のどの先生も、真剣に生徒に向き合って日々努力されていると信じていますので…。

【石渡区長:水越渉】

料理教室

 朝陽公民館で毎月1回開いている「男性のための料理教室」に通って今年で4年目になります。生徒は6、70代のおじさん(おじいさん?)が中心。腕前はまぁ、みなさんドングリの背比べ。包丁より口を動かしている方が多い。だから楽しい。

 きっかけは私が定年になり、家にいることが多くなったことです。妻はパート勤務で帰宅は午後6時半過ぎ。ということで必然的に夕食担当が私に。しかしリンゴの皮もうまくむけません。ということで料理を習うことになったわけです。

 何よりも先生が楽しい。竹を割ったようなさっぱりした性格で親近感があり、初歩的な質問にも丁寧に答えてくれます。さらにレシピが大変ありがたい。おかず2品とデザート1品がふつうですが、いずれもその日の夕食に使えそうな簡単でおいしい料理ばかりです。あらためて感じているのは、料理は作ることも大変ですが、何を作るか考えることの方が大変で、しかもそれが毎日のことなのだから…。そんなことを妻に話すと「私は40年もやってきたの。今頃気付いたの」と偉そうに話します。ハイハイその通りですよ、奥様。

 最近、腕試しに別の料理教室に参加しましたが女性ばかり。腕の差は歴然で、しかも初対面だから何を話していいのかまごつくばかり。結局黙々と食器洗いでした。いろいろな分野で男女共同参画が必要だということには反対しません。でも、料理教室に限っては男ばかりの方がとても気楽で楽しいと断言できます。次回が早く来ないか、首を伸ばしている今日、このごろです。

【石渡区長:水越渉】

 

地域の力~互助の精神を

 地域の人と共に語り合い、笑い合い、知り合う…。このことがとても楽しく、大切であることをあらためて知りました。

 6月25日の球技大会のあとの親睦会。雨の心配もあって公民館に変更になりました。1常会から9常会の選手や役員でぎっしり。隣の人と背中や肩が触れるほど狭い。でも、会が進むにつれ、すぐそばの前後左右の人と話すのにとても便利な距離だとわかりました。子どもや孫、女房の話、高齢の親の世話や勤め先の不満や人間関係などなど。思いや悩みなどを話し合うことで、自分だけではないことを知りました。それは自分への力づけになるだけでなく、いままで知り合うこともなかった同じ地区の人への親近感にもつながりました。

 5日後、朝陽地区防災研修会に参加しました。3年前の長野県神城断層地震で大きな被害を受けた白馬村堀ノ内地区のDVDを見ました。倒壊した家屋多数にもわらず死者はゼロで、「白馬の奇跡」と呼ばれました。昔からの地域で、区長、組長(石渡では常会長)、伍長(石渡では組長)という自主防災の組織があり、伍長が障害のある人やお年寄りなど助けるべき人たちを普段からしっかり把握していたため、迅速な救助ができたとのことです。背景に互助の精神や慣習があったからこそという解説でした。

 新しい人たちが大勢移り住んでいる私たちの石渡地区は、互助の精神はまだ十分でないように感じます。さまざまな行事や作業、懇親会など区民が集まる機会を多く設けて大勢が参加、知り合うことで互助の精神が育っていくのではないか、なんて思っています。ただ、懇親会は賛成ですが、にじり寄ってきて酒臭い息を吹きかけるのはまだしも、熱弁のあまり唾を吹いたり、酒を人のズボンにこぼすのはご勘弁を(笑)。

【石渡区長:水越渉】

カメラのレンズ

 最近は昼間、テレビを見る機会が増えました。割と見ているのがSBCの午後2時からの「ずく出せテレビ」です。理由があります。20年ほど前、「ほっとスタジオ」という似たような夕方の番組に、コメンテーターとして1年半ほど出ていたことがあります。残念ながら、顔がいいからとか、頭がいいからという理由ではありません。勤めていた新聞社の上司から、ある日突然、理由不明のままSBCへの出演を命じられたのです。

 やることは、新聞記事や番組で流したニュースの解説が中心です。大慌てで資料を集めてスタジオに入って机の前に座ると、目の前にテレビカメラが3台、そらってこちらに向いています。黒く光るレンズの奥を見ていると、私のこころをのぞかれている気持ちになるのです。「たいした知識もないのに知ったかぶりをして」なんてつぶやいているように見え、怖くてレンズを正視できませんでした。毎日スタジオに入るのがしんどくて、半年で胃炎ができ、おまけに痔にもなっちゃいました。いま、後輩が自由に楽しげに話しているのを見ると、たいしたものだと感心しています。

 あれ以来、どうもテレビカメラに限らずカメラのレンズが苦手になりました。レンズを向けられると、こころの底を見透かされているようで、表情が硬くなりほほ笑むことができません。政治家や芸能人がカメラを直視して堂々と笑顔を交えて話しているのを見ると、彼らは本心を話しているから怖くないのか、あるいは本音を見透かされないテクニックで怖さを封じたのか、考えちゃいます。もちろん、後者であることは間違いないでしょうが…。

【石渡区長:水越渉】

 

欲と好奇心

 先日、久しぶりに木島平村の家庭菜園にいきました。草刈りや水やりを終えると、地主のおばあちゃん「アヤコさん」がお茶を飲んでいけというので、居間におじゃましました。

 5月に86歳の誕生日を迎え、家族が祝ってくれたという写真を見せてもらいました。2人の子ども、6人の孫、4人のひ孫に囲まれ、にこやかにほほ笑む姿は、幸せを絵に描いたようです。でもそれは表面だけ。10数年前にご主人を亡くし、前後して全身の筋肉、特に脚の筋肉が失われてゆく難病を発症しました。畑を借りた当時は、壁やいすの背を伝って移動していましたが、今は這ってでしか移動できなくなっています。口の周辺の筋肉も衰え、発音もはっきり聞き取れません。でも頑として施設に入らず、週2回のデイサービス以外は自力で生活しています。

 話の途中、テーブルの隅に目をやると岩波文庫が置いてあります。タイトルはトルストイの「戦争と平和」。全6巻で、今は3巻を読んでいるとのこと。後ろの本棚には文庫本や単行本がぎっしり並んでいます。「なぜ?」という質問に「ボケ防止」との返事。あんな大作にあの年齢で挑戦する意志がすごい。そういえば、アヤコさんは新聞も2紙とっており、「トランプさんは世界をどうする気かね?」なんて質問され、冷や汗を流したことがあります。私にもボケ防止に読書を勧めます。

 正直、本を読む気力はもうありません。でもボケは怖い。と思っていたら、テレビで誰かが話した「欲と好奇心があればボケない」という言葉が浮かんできました。「欲」とは食欲であり、異性を求める心であり、あらゆる生きようとする意欲だとか。それならゼッタイに自信があります。特に2番目には(汗)。アヤコさんは読書、私は「欲と好奇心」で、意識清澄のまま人生をまっとうすることでしょう(たぶん)。

 【石渡区長:水越渉】

4人の個性派

 知的障がい者が共同で生活しているグループホームで、宿直を始めてから5年になります。週3日または4日、ホームに泊まり込んで4人を見守るのが仕事です。

 4人の一日の生活は、世話人さんがつくった朝ごはんを食べ、それぞれの適性に合った施設、たとえば洗濯工場や農園などに出かけます。夕方、帰宅すると食事をして入浴、それぞれの部屋に入ります。

 私は夜9時に出勤すると、4人が穏やかに過ごしているか見守り、朝6時に起きるよう声かけをするのが仕事です。7時に交代です。何もなければ仮眠も十分でき、楽な仕事です。しかし、世の中はそれほど甘くありません。みなさん個性あふれる人たちばかりだからです。

Aさんは、居間のテレビが一晩中、ついていないと気がすみません。だから深夜、1時間置きくらいに階段をドドドっと降りて来てテレビをつけます。その音でBさんが目を覚まして騒ぎ出します。Bさんは興奮すると大声を出したり、リモコンを投げつけたり…。こんな時はハグして「若い女性ならいいんだが…」なんてボヤキながら背中をさすってなだめます。Cさんは「恋人ができた」と自慢して、彼女のことになると話が止まりません。Dさんは全くのマイペース人間。こだわりが強く着替えだけでも20分はかかります。急がせても頑として言うことをききません。

うれしい時があります。出勤した時に迎えてくれる笑顔、帰るときにハイタッチした手を離さず、帰ってはいけないと訴える真剣な顔…。彼らから、優しく接することの大切さを教わったような気がします。みなさん、これからもお手柔らかに、そしてよろしくお願いしますという心境です。

【石渡区長:水越渉】

感動2題

 信州大学付属特別支援学校の運動会が先月下旬あり、来賓として招かれました。知的障がいのある小学生、中学生、高校生が通う学校で、総勢54人の生徒が参加しての運動会です。みなさん玉入れやダンス、太鼓演奏などに一生懸命取り組み、とてもいい表情を見せてくれました。

 中でも「かけっこ」。いっせいに走り出しました。しかし1人が走り出しません。じっとうつむいています。すると、最初に走り出した生徒が、走ろうとしない生徒のところに戻り、手を差し伸べて一緒に走ろうと、誘うのです。ですが生徒は走ろうとしません。それでもじっと手を差し伸べて待っています。10秒、20秒…。そんな状態が30秒ほど続きました。やがて生徒はにっこり笑い、差し出された手をにぎり、2人はゴールを目指して走り出しました。

 なぜか、胸が熱くなりました。気が付いたら手のひらが痛くなるほどの拍手を送っていました。長い人生を過ごしているうち、錆びついたこころの琴線が、2人の光景でよみがえった感じでした。

 保護者席に、以前勤めていた会社の後輩が夫婦で来ていました。聞けばお子さんがダウン症でこの学校に通っているとのこと。あれこれ話しました。印象的だったのが、夫婦の関係が険悪になると、子どもはひどく不調になる、だからいつも仲良しの関係を保つよう、互いに相手を思いやっているという内容です。「だからあの子のおかげで私たち夫婦はいまでもラブラブなんです」とけっこう真顔で話したのには、あきれたり感心したり。

 実は前日ケンカをしていました。関係修復のため、後輩の話をパクりました。帰ってから妻に「毎日ありがとう」なんて話しました。妻は「あやしい。何か隠し事をしている」との返事。こころに愛のない言葉は通じませんでした(汗)。

【石渡区長:水越渉】