欲と好奇心

 先日、久しぶりに木島平村の家庭菜園にいきました。草刈りや水やりを終えると、地主のおばあちゃん「アヤコさん」がお茶を飲んでいけというので、居間におじゃましました。

 5月に86歳の誕生日を迎え、家族が祝ってくれたという写真を見せてもらいました。2人の子ども、6人の孫、4人のひ孫に囲まれ、にこやかにほほ笑む姿は、幸せを絵に描いたようです。でもそれは表面だけ。10数年前にご主人を亡くし、前後して全身の筋肉、特に脚の筋肉が失われてゆく難病を発症しました。畑を借りた当時は、壁やいすの背を伝って移動していましたが、今は這ってでしか移動できなくなっています。口の周辺の筋肉も衰え、発音もはっきり聞き取れません。でも頑として施設に入らず、週2回のデイサービス以外は自力で生活しています。

 話の途中、テーブルの隅に目をやると岩波文庫が置いてあります。タイトルはトルストイの「戦争と平和」。全6巻で、今は3巻を読んでいるとのこと。後ろの本棚には文庫本や単行本がぎっしり並んでいます。「なぜ?」という質問に「ボケ防止」との返事。あんな大作にあの年齢で挑戦する意志がすごい。そういえば、アヤコさんは新聞も2紙とっており、「トランプさんは世界をどうする気かね?」なんて質問され、冷や汗を流したことがあります。私にもボケ防止に読書を勧めます。

 正直、本を読む気力はもうありません。でもボケは怖い。と思っていたら、テレビで誰かが話した「欲と好奇心があればボケない」という言葉が浮かんできました。「欲」とは食欲であり、異性を求める心であり、あらゆる生きようとする意欲だとか。それならゼッタイに自信があります。特に2番目には(汗)。アヤコさんは読書、私は「欲と好奇心」で、意識清澄のまま人生をまっとうすることでしょう(たぶん)。

 【石渡区長:水越渉】