「区長の独り言」カテゴリーアーカイブ

卒業式

 先日、信州大学附属特別支援学校の卒業式に出席した。昨年4月の入学式に出席したから一年ぶりの訪問になる。一人一人の顔を見ると、思い出す生徒が何人かいた。みなさん、少し成長した顔つきになっていました。

 今年の卒業生は、小学部が2人、中学部が3人、高等部が7人。卒業生たちは名前を呼ばれると、レッドカーペットを一歩一歩踏みしめ、思い出の写真の入った卒業証書を受け取っていました。中には、緊張のせいか走り出したり、Ⅴサインをつくったりする生徒も。別れの寂しさと感謝を込めて、卒業生と在校生とが呼びかけ合って歌う「旅立ちの日に」「365日の紙飛行機」は素晴らしかった。加齢とともに感動という感性が希薄になった私でも、グッとくるものがありました。後ろに座っていたPTAの会長さんなんか、目頭を押さえて声を出して泣いていましたよ。

高等部の7人は企業に就職が決まり、4月から社会人になります。苦労やつらいこともあるだろうが、楽しいことだってあるに違いない。頑張ってほしいと心の中でエールを送りました。と、偉そうなことを言っていたら、頑張らなければならないのは自分自身ではないのかと気づき、苦笑いでした。私は、まもなく男性の平均的な健康寿命を超えます。旅立ちまであと10年。体のあちこちに障害が出て医者通いや、最悪寝たきりになるのかな。でも誰かが言っていました。「70代は、沈む日を見ながら日ノ出を浴びているぜいたくな年代だ」と。老いとか死を意識しながらも、暖かな光の中で毎日を楽しく送ることができるということかな(よく分からないけど)。まぁ、健康寿命を少しでも長く伸ばせば、何かいいことがあることを信じてガンバでいきましょう。

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今月末で区長を卒業、相談役という区の役に就きます。よって「区長の独り言」は終了。その後をどうするか考えていますが、やや息切れもしています。でもこのコラムに愛着もあります。未定ですが「私のつぶやき」のようなタイトルでスタートするかもしれません。その際は応援よろしく、です。

【文:石渡区長 水越渉】

はつらつ体操、再開

 毎週月曜日に石渡公民館で開いている「はつらつ体操」に再び通い始めた。発足当初は毎週通って、「皆勤賞(実際にはない)をもらうぞ」と張り切っていたのだが、ある朝、どうもやる気がなくて休んだのがいけなかった。次の週も行く気が出ず、以後、ズルズル休みっぱなしになってしまった。「一人でやればいいんだろう」とか言って、体操のイラストを冷蔵庫に張ってやり始めたが、「コンニャクの意志を持つ男」と言われる区長は、一回で挫折してしまった。

 なぜ、再開したのか? 特に健康になりたいと思ったわけではない。「区長は率先してやらねば」とか「区の事業なのだから区長は出るべき」など、会合や道路で行き会う人から言われたことが、私の背中を押したのです。体操はけっこうきつい。もともと体が硬いせいもあって、ストレッチをすると思わず「ア~」とか「ウ~」とかのうめき声が出てしまう。となりのおじさんから「妙な声をだすな」と叱られたりもするが、それなりに楽しいし、体操の後のゲームなどの脳トレもまた楽しい。

 驚くのは、私よりかなり年配の女性たちの多くが元気で体が柔らかいこと。前屈なんか両手がピタッと床に着くし、「へそのぞき」と呼ぶ腹筋強化もスイスイとこなしている。5分間の休憩でも、男性は所在なくぽつんとしているが、女性たちはあちこちでおしゃべりを楽しんでいる。

 はつらつ体操には毎週2~30人が参加している。リーダーによると「ここに来る人は心配ない。誘っても来ない人、閉じこもっている人が心配」という。健康寿命を少しでも伸ばし、介護保険や医療費を抑えようという大きな目標を持つこの教室だが、笛吹けど踊る人はなかなか増えないようだ。だが、私は踊ってみようと思う。健康で楽しい老後を送るために・・・。

【石渡区長:水越渉】

補助金

 面倒なものです。いやいや人間関係ではありません。市へ提出する補助金申請の手続きです。書類が多いだけでなく、記入する内容もこれまた多い。うんざりするほどです。でもその補助金がないと私たちの活動は立ちいかなくなります。我慢、我慢です。

 私たち8常会にある公園は、子どもが少なくなり荒れていました。有志が3年前にボランティアグループ「いこいの会」をつくって、公園の草刈りをしたり、花壇をつくって季節季節の花を咲かせ、住民の交流の場にしようと活動しています。その資金に市の「まちづくり活動補助金」を申請しています。すでに2年間補助金を受けており、30年度に3回目の手続きを予定していました。ところが30年度から制度が突然大きく変わりました。これまでの手続きもずいぶん面倒でしたが、新制度はもっともっと複雑になりました。

 記入すべき項目をざっと挙げてみます。活動実績、応募する活動の目的及び達成目標、活動の具体的内容、月ごとの活動計画、活動することで期待される地域への効果・成果、活動を継続するための資金面や人材の確保、翌年度以降の活動内容、事業の最終目標・・・。事前にすべて記入して市の担当者の事前審査を受けました。「ここが違う」「あそこがおかしい」など2回も書き直してようやく受理されました。しかしこれでOKではありあません。このあと市民代表の審査員による審査会で、質問攻めがあり、ここで合格して初めて補助金がもらえるのです。もちろん不合格の可能性もあります。

 新聞やテレビなどで時々、公務員の税金の無駄遣いや不正使用が報道されます。今回、あらためて補助金申請手続きの厳しさと複雑さを経験した私なんか、「公務員は、自分たちが使う税金にはとても寛容だが、市民に与える税金には異常というほど厳しい」と思うにいたりました。考え過ぎであってほしいのですが・・・。

【石渡区長:水越 渉】

「区長」の効果?

 少し前の話です。といっても去年の12月29日のこと。この日は最後のごみ収集日で、対象は可燃ごみとプラスチックごみ。午前8時過ぎ、ごみステーションのお当番さんがやってきて、「困った。大量の違反ごみが出ている」というのです。

 確かにすごい。プラスチックには違いないが、発泡スチロールなどがべったりついています。幅80センチほど、長さが1メートル余りの板状のプラが5,6枚ずつひもでしばってあり、それが8束もあります。粗大ごみシールも張ってありません。市役所は休みに入っている。さあ、どうする。相談しても、どうせ1週間ほど外に出しておいて引き取らなければ電話をください、と言うに決まっている。とりあえず電話しました。職員がいました。事情を話すと案の定、「1週間・・・」と言います。ところがそのあとの言葉が驚きでした。「お正月に大量のごみが並んでいるのもどうかと思います。業者さんに連絡して今日中に収集するよう手配します」。なんという柔軟な姿勢でしょう。その日の夕方、違反ごみは見事に収集されていました。

 きれいになったごみステーションを見ながら、市の職員は変わったと思いました。一方で疑問も湧きました。電話で石渡の区長と名乗った時、職員の口調が少し丁寧に変わった気がしたからです。つまり区長だから柔軟に対応したのではないかという疑問です。そういえば、区長を名乗って道路の穴や段差の修理を依頼すると、2,3日中に直っています。区長という肩書の効果なのでしょうか。試しに、機会があったら一市民として電話してみよう。区長と同じように対応したら、職員は変わったと認めるつもりです(性格、悪いかな?)。

                             

新年あけましておめでとうございます。穏やかな年でありますように。「区長の独り言」もよろしくお願いします。

【石渡区長:水越渉】            

おせち料理

 今年もおせち料理の時期がやってきました。定年を迎えた7年ほど前に料理を習い始めました。妻が働いているので、私が夕食をつくることになったためです。それまで料理には関心はなく、リンゴさえむけませんでした。冷や汗をかきながら包丁を握って夕食を作っているうち、「田作り」を教わったのがおせち料理との出合いです。意外と簡単にでき、家族の評判も良かったこともあり、毎年おせち料理に取り組むようになったわけです。

 住自協の「男性の料理教室」に通い始めたことも、おせち料理に力を入れる原因です。先生は毎年11月になると、初心者でも失敗しないおせち料理を教えてくれます。これまで、「治部煮」「昆布巻き」「伊達巻き」「紅白なます」など教わりました。いまではこれらのメニューはわが家の定番おせちになっています。中でも「伊達巻き」は好評で、孫たちは重箱に残ったものを“テイクアウト”するくらいです。今年は「岩石卵」を教わりました。すごい名前ですが、簡単にできてうまい。しかも彩りがとてもきれいで、重箱の中で輝くこと間違いなしです。余力があれば「たたきごぼう」や「鶏手羽の香り焼き」なんかも作ってみたいのですが(無理かな)。

 年末におせち料理に思いを巡らすことができるのは穏やかな証拠でしょう。できればずっとこの穏やかさが続くといいのですが、世界を見ると不安がいっぱいです。日本も深刻な高齢社会に入り、来年6回目の年男を迎える私としては老後がますます心配になっています。そうはいっても、来年は今年より少しでも良い年であってほしいと思います。来年もどうかよろしくお願いします。お互いの健康と健闘を祈って・・・。

【石渡区長:水越渉】

 

 

 

助けられ下手?

 先日行われた福祉懇談会で、ケアマネージャーの「助けられ下手のお年寄りが多い」との発言が気になった。隣近所の人に「ちょっと助けて」と言うことができないお年寄りが多いというのだ。人さまに迷惑をかけたくない、こんなことを頼んでは世間に申し訳ない―などの意識が強いためという。もっと言えば、隣近所と良好な人間関係が出来ていないからではと、ケアマネージャーは説明してくれた。

 そういえば心当たりがある。近所の80歳代の老夫婦。夫は重い腰痛持ちで、妻は病院通いをしている。つらそうに側溝や庭の掃除をしたりトマト棚の整理をしているので、やりましょうと申し出ても大丈夫と言う。善意の押し売りになってはいけないと思い遠慮したが、少しは近所に頼ってもいいのではと思う。しかし、それには双方がもっといい関係を作らなくてはいけないのかも・・・。

 区の福祉推進支部長の廣澤一由さん(9常会)が中心になって11月、石渡区の全世帯852世帯に困りごとアンケートを実施した。どんなことに困っているかの実態調査です。回答のうち「困りごとあり」と答えたのは75世帯。内容は除雪に困っているが23世帯。買い物やゴミ出しは2世帯とか1世帯だけでした。おそらく実際は困っている世帯はもっとあるのではと推測している。区としても、こうした声を挙げないお年寄りをどうやって把握していくかが課題になっている。

私なんか、やがて動くのがつらくなったら、うるさがられるくらいに近所に助けを求めようと思っている。だって長い間働いて少しは世の中に役立ってきたんだ(と思う)。今度は世間から恩返しをしてもらう番だと開き直って助けを求めるので、石渡区のみなさん、特に8常会のみなさん、よろしくお願いします。

【石渡区長:水越渉】

                     

支え合い、助け合い、そして・・・

 石渡公民館で11月21日、福祉懇談会が開かれました。テーマは「私たちは、要支援者をどのように支えることができるか」です。約50人の区民が参加して、常会ごとのグループに分かれて熱心に話し合いを行いました。もちろん、すぐ結論が出るわけではありませんが、話し合いを何回も行う中から支え合い、助け合う方法が生まれてくるのではと思います。

 今年になってこの「支え合い、助け合い」をテーマにした講演会や研修会が数多く行われるようになりました。最近だけでも、「支え合うまちづくり住民意見交換会」「支え合いマップづくり研修会」「支え合いまちづくり視察研修」などがあります。

背景には2025年問題があります。人口の多くを占める団塊の世代全員がこの年に75歳以上の後期高齢者になります。ということは、医療費や介護費用が大幅に増えます。このため私たちが支払う健康保険料や介護保険料も激増、支払い能力を超えるケースが続出し、保険制度が立ちいかなくなることが予想されています。

 この事態を避ける方法が、地域における支え合い、助け合いだといいます。地域で介護予防の運動を行ったり、比較的軽い要介護者の買い物や雪かきなど生活のお手伝いをすることで介護費用を抑える内容です。しかし現在の地域の様子はどうでしょうか。たとえば球技大会や運動会は参加者が年々減り、野球や綱引きなど常会単位ではチームが組めなくなっています。役員探しも年々厳しくなっているようです。

地域の「きずな」がますます求められる一方で、個々の人たちの地域への「きずな」が年々薄れている気がしてなりません。今後このギャップをどうやって埋めていくか、乗り越えなければならない問題だと思っています。

【石渡区長:水越 渉】

投票管理者と投票立会人

 衆議院選挙で投票管理者を、長野市長選挙で投票立会人を務めました。区長だからということらしい。気乗りのしない私に、市の職員が「管理者の両隣には白バラ会の会員が座ります。女性です」と意味ありげにささやきました。「白バラ?」「女性?」・・・。期待が膨らみます。でも、なにごとも人生と同じで、期待するものではないことを知りました。

 管理者にしても、立会人にしても、初めて経験して分かったことは「NST」。つまり「眠い、寒い、退屈」ということです。椅子に座ってひたすら投票する人を眺めているのが仕事。もちろん投票所の秩序が保たれているか、おかしな行動をするものがいないかなどチェックするのが任務ですが、みなさん整然と投票をしており、そんなケースはほとんどありません。朝7時から午後8時までの13時間、ほとんど座りっぱなしです。終わった後も投票箱を開票所まで運びますので、帰宅は夜の10時前。長かった。そして寒かった。なにもしないって疲れるんです。

 投票する人を見ていると、さまざまな光景が散見されました。「こんにちは」と元気に入ってきた中年の女性。なにを慌てたのか、投票用紙の代わりに入場券を投票箱に入れてしましました。「大変、どうしよう。すみません」と涙ぐみながら大騒ぎです。かと思うと、若い男性。記載台の中でごそごそ5分間もじっと何かをいじっています。不審に思って尋ねるとスマホで候補者の主張を調べているとのこと。そのくらい事前に調べて来いよとは思いましたが口には出さず、選挙公報を取りよせて渡しました。結局ほとんど読まないで投票していきました。

 車いすで投票に来たお年寄りも何人かいました。杖をつきながら苦しそうに歩いて投票に来た方もいました。2人の乳児を抱え汗をかきながら投票したお母さんもいました。それぞれの切実な願いを込めた一票です。今度は政治がそれに応える番です。期待を裏切らないでほしい。投票する人の後姿を見ながら、そんな思いが込み上げてきました。

【石渡区長:水越渉】

講演「差別を考える」を聴いて

 少し前になりますが「差別・人権侵害の要因を考える」というタイトルの講演がありました。朝陽地区の各種団体の役員を対象にした研修会で、講師は長野市役所の人権・男女共同参画課の小澤千秋さん。

 冒頭、小澤さんは「5年ほど前から部落地名総監がインターネットに掲載されるようになった。全国の被差別地区が載っており、GPSとつなげると自宅まで判明できる。それが就職や結婚に使われ差別が深刻化している。その被害を受けた人の相談がとても多い」と話しました。これには少なからず驚かされました。

 こうした差別がどのように生まれたかが、講演の主題です。小澤さんによると、江戸時代にさかのぼります。飢饉や過酷な年貢の取り立てで一揆が多発します。為政者(藩主や幕府)は支配が揺らぐのを恐れ、農民の中に被差別部落をつくり、互いに憎しみ合うようにしむけて不満をそらせました。農民の方も、人間が持つ優越意識が差別を助長したということです。そして全国の農民を地域のお寺の檀徒に登録させて「宗門人別改帳」を作成しましたが、やがて被差別地区の人たちをそれから除外して、別冊に記載するようにしたとのことです。つまりお寺も差別に深く関与したとの説明でした。

 小澤さんは、差別をしないための3か条を提案しました。差別の歴史を学び不当性を知る、差別してしまう自分を自覚する、日ごろから相手の違いを認め気持ちを理解する―です。私としては、優越感に浸りたくなる“内なる差別の心”をどう自覚して抑えていくかが小澤さんから与えられた宿題だと思っています。でも、久しぶりに難しい話を聴いたり考えたせいか、その晩は“知恵熱”が出て眠れませんでした。

 

【石渡区長:水越 渉】

 

                       

退職

 71歳を迎えたのを機に、5年間働いた宿直アルバイトを辞めました。心に障害を持つ人が、社会との関係を持ち続けるため、街中の住宅を借りて数人で共同生活をしています。グループホームと呼んでいます。1週間に4日、そのホームの宿直をしていました。夜9時から翌朝の7時までが勤務時間です。私の勤めていたホームには4人が生活しており、入浴の介助や就寝へ誘導、夜間の見守りなどが仕事です。

 当初はお互いが分かり合えず大変なことも多かったのですが、やがて心の通い合いのようなことができると、穏やかな関係になりました。といいましても、時には激しく大声を出したり、暴れたりはしましたが。でも、会話はできなくても心は通じることを発見しました。眠れない時にはハグしたり、子守唄代わりに下手な演歌を歌ったり、私が抱えている悩み事をやさしく話したり・・・。やがてホームに出勤すると笑顔で迎えてくれるようになりました。帰る時は腕をつかんで帰るなとの意思表示をしてくれるようにもなりました。必要とされるのはうれしいものです。

 しかし、次第に疲れを感じるようになってきました。帰宅してもすぐ眠れるわけではなく、区などの会議では居眠りをするようになりました。もう限界かなと思い退職したわけです。宿直がなくなったいま、とても解放された気分で、テレビを見たり本を読んだり、秋の夜長を楽しんでいます。でも、また働くつもりです。ただし働き口が見つかればですが。中学時代の恩師の言葉が思い出されます。「働くということは、傍(はた)を楽にすること。傍とは自分のまわりだけでなく世の中に役立つこと」。いい言葉だと思います。

【石渡区長:水越 渉】